衝動ってのは、やめられないからあるのであって。
それを責めてやめろだのなんだの言ったって無駄なことくらい解る。

解る、が。

「………っ!」

息が出来ない。
てことは酸欠になるだろ。つまるところこいつは俺を殺したいのか?
いやそれはない。
こいつぐらい頭の回転がいいやつならこんな回りくどい手段は選ばないだろう。
もっと確実で且つ迅速な手段を選ぶ。
しかも厭味なくらい完璧な完全犯罪だ。

手段はともかく殺意はどうなんだろうか。
計画性のない衝動的殺人。
少しばかり酸素の巡りは悪くなっている気がするが、その答えもノーだと俺の脳は即答した。
俺は一応某活動内容不明通称わけのわからん団体の団長のような傍若無人な振る舞いはしていないつもりだし、こいつにだってとりあえず殺人衝動を抱かれるようなことをやった覚えはない。
俺の名誉にかけて言うが一切ない。

じゃあ動機なしの無差別殺人か?

それこそありえないだろ。
今一人を殺すのでこんなに手一杯になってる奴が。

じゃあなんだこれは。

なんで今、警備員さんよろしく常駐している長門有希すら帰宅した後の部室で。
何故俺は口を塞がれて、呼吸もままならない状況に置かれてるんだ?

しかもそれをやっているのは1年9組在籍自称超能力者(ああ自称はもう余計か)こと古泉一樹で。
本人曰く自分の超能力は閉鎖空間でしか使えないらしいのだが、実は今現在絶賛使用中だったりしても俺は一切疑ったりしないだろう。それが以前この目で見た能力と違うものであろうが。

じゃなきゃ説明がつかない。

今身動きが取れないほど拘束されている状態も、息もまともに出来ないほど口を塞がれている状況も。




そう、これが世間一般で言うキスというものだなんて。

これは、そんな生易しい一言で片づくような代物じゃなかった。





     


...080326