銃の重さと意味するもの


「あああもう、見てらんないわ!!!」
「は?」


授業終了後、チーム練習として射撃訓練場に集まったハルヒ、長門、朝比奈さん、そして俺だったが、俺が何発か撃ち始めたところ、このチーム名を勝手に『SOS団』と命名し直し、良い意味でも悪い意味でも注目を集めて大騒ぎを起こす五人組としてこの学校全員に知れ渡ってしまった原因であり元凶でもある涼宮ハルヒことSOS団団長が、頭を抱えて叫んだ。
訓練場の中には俺たちだけではなく、別のチームのメンバーもいるのだが驚きのあまり全員固まってこちらを見ている。ああ、また何かやらかしたんじゃないかという目でこっちを見るんじゃない。まだ何もしていない、まだ!
そんな周囲の視線をものともせず、人様に向かって指を突きつけた後ハルヒはこう言った。

「ちょっとキョン、あんたやる気あんの!? 実技試験は一週間後なのよ!? このSOS団に所属しといて落第とか絶対許さないんだからね!?」
「俺だって、みすみす単位を落とすようなことをするつもりはないぞ。」
「うっさい、どの口がものを言うのよ! そんな言い訳はね、古泉君みたいに上から数えた方が早いってなくらいまでになってからにしなさい! あんたの成績じゃ下から数えた方が早いってもんじゃない!」

俺の言葉をぴしゃりとはねつけると、ハルヒはぶつぶつ言いながら何かを考え始めた。
なんの因果か士官学校まで通うことになっている俺が、ここにきて実技で落第なんぞ親の顔を思い出すだけで恐ろしい。言われるまでもなく試験までにはもう少しどうにかした方が気持ち的に楽になるとは解ってるが、思うようにはいかないもんなんだよ。お前と違って俺は凡人なんだ。
気を取り直してもう一度挑戦してみようと銃を構えたところ、SOS団五人組の最後の一人、古泉一樹が軍服で訓練場に姿を現した。寄宿舎に戻る前にこちらに来たのか、少々重たそうな荷物を抱えてこちらへ寄ってくる。

「すみません。遅れました。」
「呼ばれてたのか?」
「ええ、先日から少々。」
「ふーん。ご苦労なこったな。」
「まぁ、これも任務の一環ですから。」

俺たち訓練生はまだ軍服が支給されない学生という身分だ。が、それでも軍人の端くれであることに変わりはなく、訓練生の中でも飛びぬけて成績の良い奴は、インターンシップといえば聞こえの良い……実践に借り出されることがある。つまりは戦場だ。実はこのSOS団では俺以外、全員が専用の軍服を支給されていて、そこがまたレベルの差を浮き彫りにしてくれるのだが、まぁそれはここ数ヶ月で慣れてきたから放置するに限る。そんな派遣生の中でも成績上位にいるのがこの古泉だ。
今日も腹の立つほど整った面に笑顔を付属させるこの男はSOS団の副団長の任にも就いている。決めたのはもちろん涼宮ハルヒ団長で、別に公式な地位ではないのだが。そんな古泉の姿を認めると、ハルヒは大きく頷いてこう叫んだ。

「よし!決めたわ!!」

何をだ。と早々につっこんでやりたかったが、ハルヒがつかつかと歩み寄り、古泉の両肩をがしっと勢いよく掴む方が早かった。滅多にない事象に笑顔を貼り付けたままの古泉が随分と困惑しているように見えるのは気のせいかね?
どうだ長門。

「……心拍数が通常より30%ほど上昇。けれど、もう平常値まで戻っている。」

なんだつまらん。銃を台に置きなおして、立ち直りの早い副団長殿といつになく真面目な顔をしている団長殿を眺める。一体何を決めたって言うんだ。………早々に止めた方が身のためのような気がするんだがな。

「来た早々で悪いんだけど古泉君。これは非常に重要なことなの。聞いてくれるかしら。」
「ええ、それは勿論。」
「見ての通り、今日からチームに分かれての追加練習が許可されたわ。だからこうしてSOS団の活動を休止してここに来ているわけなんだけども………。」
「……だけども?」
「酷いってもんじゃなかったのよ………この、馬鹿キョンが!!!!!」
「いてっ!!」

そう叫びながらハルヒが俺に向かって振り向きざまに白手袋を投げつけてきた。だ、大丈夫ですかキョン君と心配そうに覗き込んでくる朝比奈さんの声が癒しだな。ありがとうございます朝比奈さん、大丈夫です。俺の顔面を直撃した手袋はべしっと実にいい音を奏でたのだが、おいハルヒ。これは決闘の申し込みとでもいうつもりじゃあるまいな。公平で且つ非常識でもない範囲のなら考えてやってもいいが、そうならないという自信だけは妙にあるぞ。
―――だが、続けられたハルヒの言葉は決闘でもなんでもなくある意味非常に恐ろしいものでもあった。

「これ以上、あたしたちがいたって何の意味も無いと思うのよね。やるべきことはたくさんあるのに時間が勿体無いわ。でも、SOS団員であるからにはキョンには何がなんでも合格してもらわなきゃ困るのよ。」
「仰るとおりかと。」
「それで考えたのよ。古泉君、キョンをマンツーマンで扱いてくれないかしら。」
「は……? ちょっと待て俺はそんなもん聞いてないぞ!?」
「今考えたんだから聞いてるわけないでしょ、ほんとに馬鹿ね。それでね、私達に配給された分の弾も全部あげるわ。当分の間、SOS団の活動もお休みでいいから一週間後の試験までに何とか形になるようにしてやってくれない?
このままじゃ、本気で危ないわ。」

俺の意見は丸無視か! おい古泉、何黙ってこっちを見てるんだ(正確には俺の遥か後方にある的だが。)、お前も何か言ったらどうなんだ!確かに個人的な特訓という発案自体は悪くはない。だが、今回のこれはあくまでチーム戦であって俺一人だけがどうこうしていい状況じゃないとは思わないか?ハルヒ…の奴は、さっき全弾ど真ん中だった…な。長門も……で、古泉のやつのは見たことないがハルヒがああ言い出すって事は良いんだろうな。でも、朝比奈さんは……朝比奈さんは……どうこうできるというレベルではなかった……気がする……。(すみません、朝比奈さん。)
そこまで思い至ってふと意識を戻すと、にこりと笑っている古泉と目が合った。思考回路を読まれていたような感覚に襲われて宜しくない。その上、こいつが今からハルヒに言う台詞が予想できて非常に宜しくない。

「解りました。僕でお役に立てるなら、やってみましょう。」

やっぱりか!! その言葉に、ハルヒは至極満足そうに頷いた。

「古泉君が役に立たないなんてことある訳ないじゃない! それで駄目ならキョンの馬鹿が悪いわ。古泉君は古泉君の思うように扱いてやって頂戴。」
「了解しました。」

俺は全然宜しくないんだが………これはもう、どうにもならんのだろうな。長門が痛いほど真っ直ぐこちらを見て何かを言わんとしている。あれはきっと「頑張って」だろう。朝比奈さんも、が、頑張ってくださいね!応援してます!とエールを送ってくださってるからな。後には引けないってか?心なしか、こちらを見ている他チームの皆様方もご愁傷様といった雰囲気だ。ああくそ、何だって俺がこんな状況にならねばならんのだ。自業自得だっていうのはこの際置いておいてくれ。

「私達はこれから女子三人でミーティングをやるわ。後で内容は報告するわね。有希、みくるちゃん、行きましょう!
頼んだわよ古泉君。手ぇ抜くんじゃないわよキョン!!」

最後に一言忠告するのを忘れずに振り向いたハルヒにせめてもの抵抗として肩をすくめた。多少むっとしたようだったが、朝比奈さんと長門を小脇に抱えて颯爽と訓練場を後にした様子を見るとそれほど気にはならなかったらしい。またもや丸無視か!と思うと複雑な気分だったが、まぁいい。問題はこれからだからな。 俺の隣で相も変わらずにっこにこと笑顔を振りまく古泉は一体何が楽しいんだろうかね。ぐるりと向きを変えて正面から向かい合う。

「…………古泉よ。」
「はい。なんでしょうか。」
「駄目もとで言わせてくれ。いや、言う。 …………逃げていいか?」
「困りましたね。……大変申し訳ないのですが、その場合は全力で捕まえさせて頂きます。」

涼宮さんたってのお願いですから、と続けられた言葉に頷く。
そうだな、そう言うと思ったよこのイエスマンめ!! ああ、解ったよ。やればいいんだろう、やれば!
トップ圏内の奴にタダでマンツーマンでご教授頂けるなんて滅多にない機会だと喜んでやるさ。
ご指導のほどよろしくお願いお願い申し上げますよ、副団長殿。
はぁ、とでかい溜息をついてやると、古泉は小さく笑って嫌みったらしく頭を垂れた。

「ご納得頂けたようで何よりです。  ――では、始めましょうか。」


かくして、一週間に及ぶ地獄のスパルタ特訓が始まった。

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射手座パロ第3弾目は士官学校時代の彼ら。相変わらずの妄想捏造で無駄に長くなったので続きます…(笑)
しかし書いてて非常に楽しいのは何でだろう(笑)
あ、射撃知識は信用しないで下さいね! 多少なり調べてますが基本捏造・妄想です!